21日サイクル表の読み方 ― どのサイクルで、何が変わったか

COLUMN 04 | 繁殖成績の物差し

21日妊娠率は、1つの数字よりも「サイクルごとの表」で見たときに、多くのことを語ってくれます。表のどの欄が何を表しているのか、どんな順番で眺めると変化に気づきやすいのか。第1回の続編として、サイクル表の読み方を一緒に見ていきます。

なぜ「表」で見るのか

第1回では、21日妊娠率が「妊娠できるはずの牛が、21日ごとにどれだけ妊娠したか」を表す、牛群が妊娠していくスピードの指標であることを紹介しました。1年分をまとめた妊娠率は、牛群の繁殖成績を一言で表すには便利です。ただ、まとめた数字だけでは「いつ、何が変わったのか」が見えにくくなります。

米国のSelect Sires 社で繁殖の専門家を務める Nebel 氏と DeJarnette 氏は、繁殖記録を見るときに気をつけたい性質として、次の4つを挙げています[2]。

遅れLAG出来事が起きてから、それが数字に表れるまでの時間差。両氏は、空胎日数や分娩間隔はこの遅れが大きいため、いまの成績を見る指標には向かないとしています。
引きずりMOMENTUM過去の成績に数字が引っぱられ、最近の変化が隠れてしまうこと。長い期間の平均ほど起こりやすくなります。
かたよりBIAS計算に入れるべき牛が抜けたり、入れるべきでない牛が入ったりすること。両氏は、2回以上分娩した牛しか計算に入らない分娩間隔を典型例に挙げています。
ばらつきVARIATION頭数が少ないと、偶然だけで数字が大きく上下すること。

21日ごとに区切ったサイクル表は、このうち「遅れ」と「引きずり」を小さくする見方です。サイクルごとに数字が並ぶので、ある時期だけ成績が動いたときに、それが平均に埋もれずに見えてきます。ジョージア大学獣医学部の Overton 氏も、正しく計算された妊娠率は、これまでの繁殖成績と、いま進んでいる繁殖成績の両方を評価するための最良の道具だと述べています[1]。

サイクル表の欄の意味

サイクル表の形は牛群管理ソフトによって少しずつ違いますが、おおむね次のような欄が並びます。

欄意味
サイクル開始日21日の区切りの最初の日。1年分なら約18行になります。
対象牛そのサイクルで授精の対象になる牛の頭数。牛群にいて、妊娠しておらず、授精を止めておらず、そのサイクルの中で任意待機期間(VWP)を過ぎている牛です。
授精・授精率そのサイクル中に授精した頭数と、対象牛に対する割合。「発情発見率」とも呼ばれます。
妊娠対象対象牛のうち、結果がわかっている牛の頭数。授精したものの、まだ妊娠鑑定の結果が出ていない牛は外れます。授精しなかった牛は「妊娠しなかった牛」として残ります。
妊娠・妊娠率そのサイクルの授精で妊娠した頭数と、妊娠対象に対する割合。これが21日妊娠率です。
受胎率妊娠した頭数を授精した頭数で割った値。1回の授精の成功率です。
損耗そのサイクルの授精でいったん妊娠と確認されたのち、流産などで妊娠を失った頭数。

Overton 氏は、対象牛の条件を「VWPを過ぎている」「授精しない牛(DNB)に指定されていない」「すでに妊娠していない」「結果が未確定でない」と説明し、発情が来ているかどうかは条件に含まれないと念を押しています[1]。発情が見られない牛も、妊娠のチャンスを逃した牛として分母に入る。ここが、授精した牛だけを数える受胎率との大きな違いです。

例で読んでみる

ある牛群の8サイクル分の表です(数値は説明用の架空の例です)。

No.開始日対象牛授精授精率妊娠対象妊娠妊娠率受胎率損耗
15/18583560%581322%37%0
26/8603762%601423%38%1
36/29622642%62915%35%0
47/20652538%65812%32%1
58/10663959%661218%31%0
68/31633860%631422%37%0
79/21613761%―――――
810/12593661%―――――
合計(1〜6)37420053%3747019%35%2

上の表をグラフにしたもの(説明用の架空の例)

結果待ち(参考) 60% 40% 20% 0% 123 456 78 サイクル(1サイクル=21日)
説明用の架空の例。赤い点線の枠がサイクル3・4。サイクル7・8は妊娠鑑定の結果が出そろっていないため授精率のみを表示し、合計には入れていません。

この表を、次の順番で眺めてみます。

  1. 合計行で、全体の位置を知る

    合計(サイクル1〜6)は、授精率53%、受胎率35%、妊娠率19%です。合計は各サイクルの妊娠率の平均ではなく、「妊娠の合計 70頭 ÷ 妊娠対象の合計 374頭」で出しています。結果が出そろっていない直近の2サイクルは、合計に入っていません。

  2. 妊娠率の列を縦に見て、動いたサイクルを探す

    妊娠率は22〜23%で推移していたところ、サイクル3・4(6月末〜8月上旬)で15%、12%に下がり、その後戻っています。1年分の平均だけを見ていると、こうした一時的な落ち込みは見えにくくなります。

  3. 動いたサイクルで、授精率と受胎率のどちらが動いたかを見る

    サイクル3・4では、授精率が60%前後から42%、38%に下がっています。一方、受胎率は35%、32%で、前後のサイクル(31〜38%)と大きくは変わりません。この表の上では、妊娠率の落ち込みは主に「授精できた牛が減った」ことと一緒に起きていることになります。

  4. 頭数を見て、ぶれの大きさを確かめる

    受胎率の32%と37%の差は、授精25頭での1〜2頭分の違いにすぎません。後で触れるように、この程度の頭数では偶然のぶれが大きく、受胎率が「変わった」とまでは言えません。一方、授精率は60頭以上の対象牛で20ポイント前後下がっていて、2サイクル続いています。

  5. 損耗と、直近のサイクルを確かめる

    損耗欄は、いったん妊娠と確認された牛のその後です。この例では6サイクルで2頭。直近のサイクル7・8は授精率だけが表示されていて、61%と、授精が回っていることがわかります。

ここから先は、牛舎で

ここまでで表からわかるのは、「6月末から8月上旬に、授精できた牛が減り、妊娠率が下がった」ということまでです。なぜ減ったのかは、表には書いてありません。夏の暑さ、作業の段取りや人手の変化、発情の見つけ方や記録のつけ方の変化、同期化プログラムの運用など、候補はいくつも挙がりますが、どれが当てはまるのか、あるいは別の理由なのかは、農場ごとに、そして同じ農場でも年ごとに違います。

その時期に牛舎で何があったのか、牛はどんな様子だったのか。表で見つけた「サイクル3・4」という手がかりを持って、獣医師や農場スタッフと当時を振り返り、牛を観ながら考えることが重要です。

読むときに気をつけたい4つのこと

1. 直近2サイクルは「途中経過」

妊娠鑑定は授精からしばらくたってから行うため、最近授精した牛の多くは、まだ結果がわかっていません。この段階で妊娠率を出すと、実際より低く見えたり、結果の出方によっては高く見えたりします。Overton 氏は、新しい授精師が加わったときの受胎率について、不受胎は発情の回帰で早くわかる一方、妊娠は鑑定まで確定しないため、早い時期の数字は低いほうにかたよると指摘しています[1]。直近のサイクルにも同じことが言えます。そのため直近2サイクルは授精率だけを参考として表示し、合計からは外します。授精率で「いま授精が回っているか」を確かめる欄だと考えると、使いやすくなります。

2. 頭数が少ないサイクルは、ぶれが大きい

Nebel 氏と DeJarnette 氏は、受胎率30%の牛群で10頭に授精した場合、ちょうど3頭が妊娠する確率は約27%にすぎず、0頭や1頭しか妊娠しないことも、それぞれ約3%、約12%の確率で起こると計算しています[2]。対象牛が10頭なら1頭で妊娠率が10ポイント動くので、1サイクルの数字よりも、数サイクルの流れで見ることが大切です。小さな牛群では、2〜3サイクルをまとめて見ると、ぶれが小さくなります。

3. VWPの設定で、数字の意味が変わる

対象牛はVWPを過ぎた牛なので、VWPを何日にするかで、表の始まりが変わります。Overton 氏は、多くの牛群が「VWPは60日」と言いながら、記録を見るとまったく違うことがあると述べ、初回授精時の分娩後日数をグラフにして「本当のVWP」を確かめることを勧めています[1]。

同氏はまた、授精開始を分娩後70〜80日以降に遅らせている牛群について注意を促しています。VWPを長くすると、計算上の妊娠率は高く出ることがある一方で、早い時期の1サイクル分のチャンスが数字から消えるため、妊娠率は高く見えても、妊娠した頭数はかえって少ないことがありうる、という指摘です[1]。よその牛群と比べるときや、VWPの設定を変えた前後を比べるときは、この点に注意が必要です。

4. 損耗は、妊娠鑑定の時期とあわせて見る

Overton 氏は、授精後およそ40日より前に妊娠を失うことを胎子の早期死滅、それ以降を流産と呼び分けたうえで、早い時期の妊娠鑑定の結果をどう記録するかによって、見かけの受胎率や妊娠率、そして妊娠ロスの割合が高く出ることがあると述べています[1]。損耗欄が増えたときは、牛の側の変化だけでなく、妊娠鑑定の時期や記録のつけ方が変わっていないかも、あわせて振り返ることが役に立ちます。

POINT

サイクル表は、答えを出す道具ではなく、「どこを見に行くか」を決める道具です。どのサイクルで、授精率と受胎率のどちらが、何頭の牛で動いたのか。そこまで絞りこめたら、続きは現場で、牛と、牛に関わる人たちと一緒に考えることになります。

まとめ

  • まとめた妊娠率は、過去の成績に引きずられ、最近の変化が隠れやすい(Nebel 氏・DeJarnette 氏)
  • サイクル表は「合計 → 妊娠率の列 → 授精率と受胎率 → 頭数 → 損耗と直近」の順に眺めると、変化に気づきやすい
  • 対象牛には、発情の来ていない牛も含まれる(Overton 氏)
  • 直近2サイクルは途中経過。授精率だけを参考に見て、合計には入れない
  • 頭数が少ないと、偶然だけで数字は大きく動く。数サイクルの流れで見る
  • VWPの設定や妊娠鑑定のやり方で、数字の意味は変わる
  • 表が教えてくれるのは「いつ、何が動いたか」まで。理由は牛舎にある

サイクル表を手に、どのサイクルで何が変わったかを見つける。そして、その時期の牛舎と牛を、獣医師や農場スタッフと一緒に振り返る。表は、その話し合いの出発点です。次回は、乳房炎と繁殖のつながりを取り上げます。

COWCOMPOSER COLUMN

牛群の数だけ、現場があります。
データは出発点。大切なのは、現場で牛の声を聴くことです。

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CowComposer は、本記事で紹介した欄(対象牛・授精率・妊娠対象・妊娠率・受胎率・損耗)を、18サイクル分の表とグラフで自動表示します。直近2サイクルは授精率だけを参考として示し、合計からは外して集計します。気になるサイクルを見つけ、獣医師や農場スタッフと同じ画面を見ながら振り返る材料にお使いいただけます。

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参考文献

  1. Overton MW (2009). Using Reproductive Records: Basics of Monitoring. ジョージア大学獣医学部(Florida Dairy Production Conference 2009). https://www.thedairysite.com/articles/2087/using-reproductive-records-basics-of-monitoring
  2. Nebel RL, DeJarnette JM (2007). Reproductive Records: Monitoring and Compliance. AABP Proceedings 40.